その一方で、市民の文化の殿堂である山口市民会館は、開館から50年以上を経過して老朽化が進んでいます。大ホールの残響時間は現代の標準的な文化ホールと比べて短く、小ホールや展示ホール、ロビーやバックヤードなど、施設全体が著しく手狭となっており、今日の文化芸術の発表や鑑賞に関する市民のニーズに応えることが困難となっています。
このため山口市民会館は、新幹線「のぞみ」が停車する県庁所在地のホールでありながら、各種研究大会や、音楽コンクールの全国大会・中国大会の誘致もできません。このままでは、全国からの来訪者や、文化鑑賞・交流の機会がますます減少することになります。
(1)ホールの音響は、演奏会場の最も重要な要素です
この50年間でホールの響きに対する国民の要求レベルは高まり、「ホールは楽器の一部である」と言われています。しかし、山口市民会館の音響は、演奏家からは「響かない」と言われており、山口市の音楽団体や演奏家が他市のホールで演奏会を行うこともあります。市民の高い演奏技術と鑑賞ニーズに応えるためには、声楽や器楽の生音の繊細で豊かな響きをきちんと再現できる、残響感の豊かなホールが必要です。
(2)客席が狭く、親子鑑賞室もないため、鑑賞環境の改善が必要です
大ホールの客席は、県内各市のホールと比べてサイズや前後の間隔が狭く、客席への出入りや長時間の快適な鑑賞に難があります。また、親子鑑賞室や託児室もなく、子育て世代、高齢者、障害者など市民誰もが快適に鑑賞できるような環境が整っていません。コンサートの観客アンケートでも、苦情や要望がいくつも寄せられています。
(3)舞台や関連施設、バックヤードの拡充が必要です
市民の文化芸術活動が大きく発展した今日では、市民会館の舞台やバックヤードは非常に手狭となっているため、コンクールなどにおける円滑な舞台転換に支障があり、また、バレエやミュージカルにおける大道具などの多彩な演出表現をする上で制約が大きいことから、舞台芸術の素晴らしさを観客に伝えることが困難になっています。
(4)文化祭やコンクールの開催には、広い敷地面積が必要です
山口市民会館の敷地面積は1万㎡未満で、県内のホールと比較しても非常に狭く、しかも建物が敷地いっぱいに建っており、スペースに余裕がありません。このため、コンクールや文化祭に出場する学校の貸切バスや楽器運搬トラックを円滑に捌くことが困難であり、また、主催者や裏方スタッフの駐車場の確保もままなりません。